『良いかどうか』という判断の基準は、『額装して部屋に飾って作品に見えるか』
苦手だった人物クロッキーの時にはどんな絵を描いたのかほとんどしゃべらなかった娘だが、イメージを主体にしていい今回のドローイングは楽しいらしい。
帰ってきたときの顔つきがこの間までと全然違う。
かなり元気だ。
どんなモチーフだったのか、どんな絵を描いたのか教えてくれるばかりか、描いた絵を持ってきて実際に見せながら説明してくれる。
今回のドローイングのためのモチーフは4つ設置してもらっているそうだ。
- 2つの人体の骨格標本が背中合わせになっていて、間にハリガネでできた玉と、造花がささっているもの。
- 下にコンクリートブロックとぶどうのついたつるが置いてあって、ブロックの穴に長い棒が刺してあってそれに種類の違う帽子をひっかけたもの。
- 大きな枯れた木、根元に石、流木とたくさんの3cmくらいのちっちゃい人形が置いてあるもの。
- 赤いドレス、Tシャツとストライプのシャツがかかったトルソー。肩のところにお面つき。
初日は木のモチーフばかり描き、二日目は骸骨の前にいる時間が多かったようだ。
水彩のイメージドローイング描き方は、下地づくりから始まる。
- まずは全体的に紙を濡らして、濡れた状態にする。
- その上に絵の具を溶いたものを筆で塗ったり紙に垂らしたりする。
- 霧吹きみたいなものでまた水をかける。
- 全体が濡れている状態の紙を、ドライヤーで乾かし始める。
- 乾いているところと濡れているところのキワに水がたまって、そこに絵の具が残る。
これで下地が出来上がる。
残された絵の具の形や色から、イメージを膨らませて描いていくのだ。
二日目の講評は、『絵としては、一見弱く見えるんだけど、不思議な世界観で面白い。ちょっと後付けのキワが強過ぎるものもある。』とのこと。
後付けのキワとは、最初の下地でできたキワではなく、自分でワザとつけたキワのこと。
描き入れ過ぎてしまうと、返って良くなくなってしまうということか。
同じ絵を、『青ばかりでなくて暖色系を使うともっと面白いんじゃない。』と言う先生もいる。
イメージドローイングは感覚を主体に描くので、指導する人の好みが講評に出やすくなる。
『良いかどうか』という判断の基準は、『額装して部屋に飾って作品に見えるか』だそうだ。
※額装とは、絵画や写真を額に入れて仕上げること。選ぶ額によってイメージががらりと変わって面白い。
部屋に飾る絵を選ぶとなると、人によって好きな絵が違うので、指導する先生が多いほど色々な意見が聞ける。
娘は高校の時は美術コースだったが、美術を希望する学生達は1クラス分もいなかった。
なので、美術高校よりも美術を指導してくれる先生の数は圧倒的に少ない。
それに加え、指導してくれる先生が皆油絵出身という訳ではない。
油絵出身の先生と『好み』が合わなかったりすると余計、どうしても求めている答えが得られなかったりもする。
油絵出身の先生の色々な『講評』をもらえるのは美術予備校だからこそ。
違う意見がもらえると、その分だけ今後の可能性が広がる。
どう描いたらいいのか悩んでいる画学生達には、必要不可欠だと感じる。