予感的中☆饒舌だった娘は、寡黙になってしまった。
昨夜は出かける用事があったので、娘が美術予備校から家に戻った頃電話をかけたのだが、様子がおかしかった。
おしゃべりだった前々日とはうって変わって、何を聞いても反応が少ない。
電話だから話さなければ意思疎通が難しいのに、『うん』か『ううん』しか言わないのだ。
くぐもった声が携帯から聞こえる。
「おかえりー」→うん
「お腹すいた?」→ううん
「お腹すいてないの?おやつたくさん食べちゃった?何食べたの?」→うん
「え?おやつ食べなかったの?」→ううん
話した時間は夜の7時半。
午前中から夕方まで。
6時間絵を描いたあとなら、ハラベコなはずだ。
おやつに何を食べたのか話せないほど落ち込んでいるらしい。
色塗りがうまくいかなかったのだと察しがついた。
慣れない描き方をしているので、うまく描けないことは想定内だ。
こういう時は放っておくしかない。
育ちざかりの子供じゃないのだから、一食抜いたってたいしたことはない。
今回娘が落ち込んでいる原因は、『グレーズ技法』にある。
グリザイユ技法で描いた白黒の下絵の上に、薄めた絵の具を塗り重ねていく『グレーズ技法』。
透明度の高い絵の具で色を付けることによって、下絵の明暗で立体的に見せることができるという。
どうやったらいいのかを頭で理解はしていても、実際にその通りできるかどうかはまた別物だ。
娘は初めての事が苦手だ。
初めての場所。初めて会う人。初めての店。
いつもよりも構えてしまうらしい。
初めての『グレーズ技法』も苦手なのは容易に想像がつく。
慣れるのに時間がかかるのだ。
今回の課題は5日で仕上げる。
いつもよりも長めだ。
表現したいことを上手に表現できるようになるには、まだまだ多くの時間が必要なようだ。