補欠合格繰り上がらなくて良かったと思う程、浪人はムダじゃない

ムサビ油画一年生がもうじき終わる。
娘は現役でムサビの補欠合格が繰り上がらなかったのだが、結果論ではあるが1年浪人したことは効果的だったようだ。
浪人することによるメリットはメンタルが強くなる等いくつかあるが、一番大きな点は『画力があがる』。コレに尽きるだろう。

まず、現役時代の娘の画力について。
受験結果からみるとわかりやすい。
ムサビは補欠:番号10番台
多摩美は不合格:成績開示の結果、評価D(評価外=学科がいくらできても入学させない)の60点と判明
1浪して再度チャレンジした結果
ムサビは合格:成績開示の結果実技は300点中290点
多摩美は補欠:番号ヒトケタ。3月2日の最初の繰り上げで合格の通知をもらう。成績開示の結果実技は300点中258点。
もともと『ムサビ向きの絵』だったので、ムサビの方が成績は良かったのだと思う。
学科はムサビも多摩美も現役時代よりもだいぶ点数は取れなくなっていた。最低ラインの4割を切っていたら、やばかっただろう(去年は学科はAとBと2日程だった。日程によっては2割だった)。
『課題が描き手の得意なものか不得意なものか+作品が採点する人の好みかそうでないか=絵の評価』なので、20点くらいは評価が簡単に変わってしまう。明確な答え合わせが出来ないのが、実技の点数の不確かなところだ。

現役時のムサビは、あともうちょっとのところまでで補欠が繰り上がらなかったのだが、浪人1年間は、娘の5年あまりの絵画キャリアの中で、一番の伸びがあった。
現役時の1年間と浪人の1年間と比べると、学科の授業がない分絵を描く時間も大幅に増え、自分の苦手な部分もカバーできるよう努力もできたようだ。
現役の時に比べると、浪人時の方が自分の絵に真摯に向き合い、自分の絵を感覚的に描き客観的に見ることが、より一層できるようになっていった。
伸び率では浪人時が一番だったが、現役の時と大学1年の今を比べると、現役の時の方がもっとガツガツとしていた気がする。
でも、知識を得ようとする力は今の方があるかな?
いや、やはり気迫に欠ける分、現役の時の方が伸びていたか。

もし、現役の時あのまま補欠が繰り上がっていたら、(浪人時の)自分の絵と向き合う時間をとれなかったので、今ほど画力もなく、知識を得ようとする意欲もなかっただろう。
浪人時代になんとなく見えてきた『自分の描き方』も、大学1年生ではおそらく見えてこなかったのではないだろうか?
美術予備校の先生方は、予備校生の画力を向上させることにどん欲だ。
それについては次の機会に詳しく述べることにするが、実はムサビの油画の実技で行われた指導と、予備校の画力向上のための指導はほとんど同じに思えたようだ(受験のためのテクニックは除く)。
違いは指導の丁寧さ
予備校では学生に寄り添って、大学が求めている画力まで、丁寧に指導してくれた。
おかげで画力が1年間でだいぶ上がった。
もちろん、精神的に追い詰められた娘が、がむしゃらに頑張れたことも大事な要素のひとつだ。
もし、現役時に補欠が繰り上がっていたとしたら、画力の低さがゆえに『落ちこぼれ』状態で大学の実技を受けていたであろう。
現役時基礎的な実技のチカラが足りなかったことは、不合格だった多摩美の成績開示が評価外の結果だったことからも想像がつく。
落ちこぼれ状態で実技を受けていたとしたら、大学1年が終わる今頃まだ、『自分の描き方』など見つけられていないだろう。
大学生になってからの伸びは、現役時よりも低いのだから。

娘にとって浪人時の1年間は全く無駄ではなかった。
いやむしろ、現役時の補欠の繰り上がり合格がなくってホントに良かった
おかげで1年間、自分の絵と真摯に向き合う時間を余分に取ることができた。
浪人の1年間を費やしたがために、大学に入ってからの実技の授業を、きちんと受け止めることができたのだ。

ファイン系にとって一番王道の出口は作家。
必ずしも大学出が必須ではない職業だが、ムサビの油画で教えてくださる先生方は、評価されている作家だ。
現役の作家(社会に実際に評価されている)である大学教授と触れ合えることは、大きな刺激をもらえることとなる。
作家である教授からしか得られない何かを、できるだけ多く受け取るには、受け止めるだけの余裕が必要だ。
いくら良いアドバイスをもらえたとしても、受け取る側が受け止められなければ、小さなコップから水があふれ出すように、全て外にあふれ出てしまう。
同じ相手から同じアドバイスをもらえても、受け取る側の度量によっては受け止めきれない可能性がある。
評価されている作家と触れ合える貴重な体験、その大きな刺激を受け止めるだけの余裕を、一年間の浪人生活で少しは得られたのではないかと思う。

将来その王道の出口から出られるかどうかは別として、いくつもの貴重な刺激をしっかりと受け止めることは今後の成長には欠かせない。
そのために少なからぬ授業料を払って、大学に通わせているのだ。
その後に大きなメリットを得られる浪人生活なら、糧になりこそすれ決して無駄にはならない。

学科の勉強と違って、大学合格のために時間を費やした実技に関することは全て、今後の作品制作に生かされていく。
1年間の浪人期間で得たものは全て、大学1年の授業で教授達が『最低ライン』として求めてきたものだったのだ。
その『最低ライン』をクリアせずに授業を受けた場合、教授達が与えてくれるものは娘は受け止めきれなかったに違いない。
ちまたで言われるような「普通科四大トップクラスに入るのなら、1年くらい浪人してもいい。」とかのレベルではない。
合格ラインギリギリで美大油画に受かるくらいなら、1年浪人した方がずっといい。
大学の授業料をドブに捨てるようなものなのだ。
※むろん、余裕のある画力で入学できるのなら、娘の例とは違うだろうことはご了承頂きたい。

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