藝大油画への現役合格の可能性
前回描いたブルーピリオド。
成績は良いが生活態度は不良だった主人公が高校2年生時にある先輩の絵に触発され、美術部に入り藝大油画の現役合格を果たす。
大学進学を考えた時に、初めて『美術』の道に進むかどうかを考慮し始めるのだが、その時点からスタートして果たして藝大への現役合格ができるかどうかを考えてみたい。
藝大に現役合格した学生の手記などを読むと、「高校2年生まで木炭で絵を描いたことはなく」とか「油を始めたのは高校3年生になってから」とかいう記述がたまにある。
受験直前まで絵を描く経験がなかったのかなと思いつつ、よくよく読んでみると「小さい時から絵を描くことが好きで」とか「絵画教室に通っていて」とか「休み時間に漫画を描いて友達に見せたり」とか、『絵を描く』という行為を幼い時からしていたんだなということがわかる。
娘が通っていた美術系コースのある私立高校のクラスメイトも、大半は10才になる前から絵を描き始めた経験があった。
クラスの中で経験が一番少ないのは中3の10月から絵を描き始めた娘だったが、その次に少なかったのは中学生になってから美術部に入った子だった。
入学時にあった経験値の差がようやく追いついてきたのは、2年半たった高校3年生の夏休み明けくらい。
学内のコンクールでまぁまぁの成績を残せるようになったのがその証拠だろう。
もちろん、ただ漫然と絵を描いているよりも一生懸命に描き始めた時の方が上達は早い。
「ムサビの油画に行きたい」と思い始めた高校3年生になってからの1年間は、浪人時代1年間の伸び率に次ぐ上達具合と思われる。
絵を描いている期間が長ければ長いほど絵が上手に描けるわけではないが、最初の1.2年はその差を埋めていくのは大変そうだった。
ブルーピリオドの主人公は、子供の頃から絵を描くのが好きだった。とか、よく描いていた。とかいう記述は全くない。
娘と同様、小学生以降はそれほど絵を描かなかったと思われる。
つまり、絵を描いている経験が大学進学を考えるまで皆無に等しかったという設定だと思う。
主人公の矢口八虎(やぐちやとら)が美術部に入部することを決めるのは、高校2年生の夏休み直前。
藝大1次まで1年と7ヶ月あまり。
彼は学校の成績はかなり良好だった。
が、まるっきりのガリベンとかではなく、朝まで友人と飲みに行くなどの『不良』友達もいる成績優秀で、世渡り上手なリア充高校男子だった。
その彼は持てる全ての時間を『藝大に合格する』ために使い始める。
勉強が得意だった彼は、絵を描くための勉強も得意だ。
全精力を絵を描くことに傾け始め、ぐんぐんと力をつけていく。
主人公が絵を描くことに描ける時間や姿勢は、娘が高校3年生の秋以降くらいからの様子に似ている。
と考えると、それだけの気力で臨めば、高校2年夏休み直前からの頑張りで、藝大油画に現役で合格するのもあり得なくはないだろうと想像できる。
作家さん自身も藝大油画現役合格だ。
ただ、作家さんである山口つばさ氏は、都立芸術高校(2012年閉校。今は都立総合芸術高校に承継された)のご出身。
都立芸術高校は、普通の高校ではない。美術科と音楽科しかない芸術に特化した高校だった。
都立高校なので、受験時の内申点も大事だし、実技も当然大事だったはずだ。(都立総合芸術高校は、美術科を受験する場合美術の成績が『5』でなければ受験資格が得られないのが原則だ)
つまり、ある程度学科もできて、実技も良くできなければそもそも芸校には入れなかったはず。
藝大を目指し始めたのは高校3年生であったようだが、長年のキャリアによる実力は充分にあったはずだ。
キャリアが長いとか勉強が得意だということだけでは、無論藝大に入学することはできない。
藝大油画で考えれば、『天才的にオリジナリティがある』とか『似たような絵を描く人の中で飛びぬけている』とか『どうしても目を奪われてしまう』等々の、他の人にはない『なにがしかの強い何か』を藝大教授達に感じさせることができるかどうかが大事だ。
それがあれば、たとえ技術的にはまだまだ拙くても、藝大への現役合格はあり得る。
まして、藝大油画は現役率が高い。
技術はまだまだでも、入試課題への答え方次第では合格する証拠だ。
藝大一次は2月25日、26日とあと10日程。
10日もあれば、1段階、2段階と表現が高まることもある。
(今は、一心不乱に描いている時期だとは思うケド)受験生のみなさん、がんばってね。
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