祖父、祖母からの孫へのアドバイスは気を付けて
私の父はタイで独り暮らしをしている。
10年くらい前に母と離婚して、3年前に『年金だけで暮らしていけるから』という理由で移住しまった。
娘の私の目から見ても、『生命力』の強い人だと思う。
言葉もまともに話せないのに、知り合いのツテを頼って単身海を渡ってしまったのだ。
ある程度の金額を持って移住したのだが、生来の『ヤマッケ』の虫のために見知らぬ土地で事業に手を出し失敗した。
持って行った金額をほとんど使い切ってしまったのだ。
2年たたない間に。
頼ったツテのために事業に手を出し失敗してしまったので、その人とは縁がなくなってしまった。
持って行ったお金でタイで『遊んで暮らす』という目論見がはずれてしまった。
でも、父はとても生命力あふれる人だ。
たとえ年はとっていても。
基本元気で、体力と時間を持て余している。
ヒマで仕方ないらしく、娘である私に連絡を取ってくる。
日本にいた時にはたいして興味を示していなかった孫のことも聞いてくる。
そして、娘に絵の描き方や感性を磨くことについてのアドバイスをしたりするのだ。
父と話しながら、『パパは絵描いてたっけ?』と言いたい気持ちをぐっと抑える。
こういう絵を見た方がいいとか、こういう風に描くべきだとか、素人のアドバイス程参考にならないものはない。
父が話せば話すほど、娘(孫)の心は離れていってしまう。
仕事が『生きがい』の人だったから、今何をしたらいいのか困っているのだろう。
知り合いもいない国に一人で、つまらないのだろう。
遊びに使うお金を事業に費やしてしまったので、楽しみにしていたシュノーケルもできなくなってしまったことは同情する。
私が知っている限り父は芸術にはうとい方だ。
むろん絵を描いたことなどなければ、そういう関係に明るいわけでもない。
父が成功したことのないことでのアドバイスなど、残念ながら役にたたない。
どこかで聞いたことがあるような『うまくいく秘訣』など不要だ。
ネットで検索すればそんなものはいくらでもある。
善意からのものであるだけ性質が悪い。
『心配してくれているんだな』と娘である私は思うことができるが、既に知っている底の浅いことをくどくどと言われると孫の気持ちは離れていってしまう。
そんなことより、実際父がどうやって生き抜いてきたのか、今までどんな失敗をしてきたのかを話してくれた方が、どんなに役にたつかしれない。
どんな風に仕事をしてきたのか、どうやって人と交渉してきたのか、自慢話や泣き言でなければ、有益な時間を過ごせるものをと、とても残念に思う。
孫に限らず、目下の者へのアドバイスは気を付けないといけない。