遺品整理
昨日家の整理をしていたら、以前飼っていたペットの鳥かごのカバーが出てきた。
鳥は陽が落ちると眠り、陽が昇ると活動しだすので、夜にはカバーをかけて眠らせていたのだ。
鳥は色に敏感で、好きな色とそうでない色がはっきりしている。
彼の体の色に似た色を好んでいたように思えたので、くちばしの色と似た色のカバーをかけて眠らせていた。
彼が逝ってしまってもうじき9年。
だいぶ落ち着いて遺品を見れるようになってきた。
寒くなってきて暖かいカバーに変えようとすると、自分のカバーの色を覚えていて、『それは僕のだ』と喜んでいたことも思い出す。
色々な記憶とつながっていて、今までなかなか捨てられなかった。
でも、今回の引っ越しを機会に廃棄することに決めた。
鳥かごのカバーをずっと持っていても仕方がない。
彼はもう戻ってこないのだ。
時間が経つにつれ、記憶は少しずつ薄れていく。
悲しかった記憶も、つらかった記憶も、ミルクを水で薄めるようにゆっくりとぼやけていく。
忘れてしまったわけではないが、失った直後の押し寄せるような悲しみに潰されることはなくなった。
今はベランダの大き目のプランターの中で眠っている。
新居にそのまま連れていくつもりだ。
ペットといえども大事な家族の一員だった。