鳴らない笛と着ない着物の行く末
ただいま引っ越し前の下準備、継続中である。
今住んでいるところの片づけをしていたら、捨てられない道具がでてきた。
大学生から習っていた篠笛だ。
愛知県に越すまでしばらく習っていた。
日本的な何かをしてみたくて、2駅離れた『お師匠さん』のもとに週に2度くらい通っていたのだ。
西洋の音楽しか習ったことのない私には、日本の鳴り物は初めてだった。
娘が幼稚園の頃など、家にだれもいない時、時々吹いてみたりしていたがここ10年くらい触っていないかも。
一番短い笛を手に取り口にあててみた。
…
…
えっと。
…
どうやるんだっけ?
ヤバイ。
全く忘れている。
そういえば、初めてお教室に行った時にも、
なかなか音が出せなくて、1時間くらい頑張ってもだめだったっけ。
篠笛は『篠竹(しのたけ)』と呼ばれる細めの竹から作られる和楽器だ。
長唄のお囃子では、唄いの声に合わせて調子を変える。
祭りばやしの笛も篠笛なので、きいたことがあると思う。
篠笛は長さによって『調子』と呼ばれる音の高さがかわる。
だから何本か持ってるんだけど…
全く音がでない。
いや。
いまさらまた篠笛始めようと思ってるわけじゃないから、いいんだけどね、音とかでなくても。
今までだって捨てられなくて、ただ持っていただけだったんだから。
音とか出る必要とかないんだから。
いいんだけどさ。
うん。
いいんだけど。
でもさ
なんとなくさ。
『音の出ない楽器』って、なんとなく悲しくない?
なんか、
『歌を忘れたカナリア』みたいで。
お師匠さんのところに行かなくなって、もう25年。
愛知県に引っ越すことになってやめちゃったんだけど。
東京に戻ってからも挨拶にも行かなくて。
結婚したらまたやりたい。なんて思ってたけど。
『和のお稽古事はお金がかかっちゃうから、僕のお給料じゃやらせてあげられない。』とか殿さま(主人)に言われて。
子育てがひと段落してパートに出た時には、自分のためにお金を使うこととか、もうすっかり忘れてしまっていて。
たくさん持っている着物だって、娘が浴衣を年に一度着てくれるくらいで。
こういう引っ越しの時って、整理するよい機会だから。
着ない着物とか。
鳴らない笛とか。
全部整理してしまった方がすっきりするのかもしれないけど。
んーーーーーーーーーーー。
なやむーーーー。
「鳴らない笛とか持っていても意味ないよね?」
とか娘に聞いたら、
「鳴らないんじゃなくて、お母さんが鳴らせられないだけでしょ」
とか冷たく言われそうだし。
うーーーーん。
どうしようか、もう少し考えてみよう。
なかなか、引っ越し前の下準備が進まない我が家である。
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