藝大に入学して、半年もたたないうちに失踪するって本当?

ブルーピリオドの最新刊を手に入れた。
つい3回も読んでしまった。

ブルーピリオド 山口つばさ作


作家の山口つばささんは、藝大油画現役合格の漫画家さんだ。
現在月刊誌アフタヌーンで連載中のブルーピリオドは、要領が良く成績優秀な遊び人だった高校2年生の男子生徒が、同じ高校の先輩の描いた絵に魅了されてしまい、美術部に入部することから始まる。
現在9巻まで出版されていて、油画系美大生にはアルアル満載の漫画なのだが、美大生でない私には「どうして?」って思う部分も多々あり、理解するのに3回読み直してしまった。
以下、ネタバレありなのでご注意を。

高校2年の夏から絵を描き始めたドシロウト(主人公)が、藝大油画に現役で合格する。
今までほとんど絵を描いたことのない人が、現役で果たして合格できるのか?できるのなら、そいつは逸材だぞっていう疑問はさておき(あり得なくはないのだ)、最新刊9巻を含む7巻からの3巻分は藝大に入学してからの話だ。
「入学して、半年もたたないうちに失踪する奴がいる」という噂もある藝大。
娘の通っていた予備校の先輩にも『現役で藝大油画に合格したにもかかわらず、夏休み前に失踪してしまい、今どこでどうしているかわからない。』という人がいる。
彼が美術を目指して奮闘していた形跡は、予備校に残された作品だけ。
美術予備校では、後進のために合格者の作品を参考作品として残しておく。
いわゆる『受験絵画』だが、時代や目指す藝大、美大によって描き方が変わる。
その時の時流にのった参考作品として、美術予備校生のお手本となるのだ。

直前まで、どころか受験当日まで実技が上達する油画。
『こう描けば絶対受かるよ』っていうのがないので、受験生同士切磋琢磨していくのが当たり前だ。
ギリギリまで頑張って藝大に合格しても、切磋琢磨が終わっていくわけではない。
「藝大生はダイヤモンドの原石です。宝石になるダイヤモンドはその中の1つでいい。ダイヤを削れるのはダイヤだけ。その他の原石はたった1つのダイヤを宝石にするために存在します。」とブルーピリオドの作者が作中で藝大の教授に言わせているように、お互いを磨きあえるのはその合格した同級生たちだ。
しかも、これは『まず最初に』がつく。
ダイヤモンドの原石を宝石にするために、同級生同士でまずは高めあう。削り、摩耗させ輝かせていく。
次は他の学年と共に、それが終わったら同時代で…とそれは永遠に続いていく。
『磨き続ける』という作業は、描いている限り一生やめることはできない。
藝大の教授達はまずはその第一歩を指導していく。
ひとつの原石を宝石に磨き上げるために、犠牲になる石はいくつあるのだろうか。
削られ小さくなり、ただの砂になってしまう場合は多々あるのではないか。

実はこれは藝大だけの話ではない。
ムサビや多摩美の油画も同様なのだ(ただし、指導する私大教授達はオブラートに包んで表現している=優しい。ストレートに言うか遠回しに言うかの違いくらいの差だ。ブルーピリオドの中で描かれている藝大の教授達の発言はかなり辛らつだ)。
一番大きな違いは、出口をどうするかだろう。
大学を卒業した後の出口。多くの普通科の四大生達は就職して企業に勤めていく。その大学としての出口だ。
藝大は宝石になれなかったダイヤの手助けはしない(作家以外の卒業後の進路は自分で活路を見出さねばならない。つまり就職活動の手助けは一切してくれない。)が、私立美大はダイヤ以外の宝石になる道や宝石になれなかった場合の出口も積極的に用意している(作家以外の教師や就職などの相談に乗ってくれる)点だろう。

ファイン系(油画、日本画、彫刻等)卒業後の王道は作家。宝石になった人たちだ。
藝大油画の定員は55名。4学年で220名。
そのうちの何人が宝石になれるのだろう。
『藝大に入学して、半年もたたないうちに失踪する奴がいる』
その理由が分かった気がする。


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