美大進学決めたら、次は専門を決めなければならない

美術大学は専攻が細かく分かれていることをご存じだろうか。
大まかにいうと、デザイン系とファイン系に分かれているが、どこに進みたいのか早めに決めたほうが受験対策には有利である。
なぜなら、受験時に『求められるもの』が変わってくるからだ。

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一般の大学を受験するのなら、学部や専攻を決めるのにそんなに急がなくてもいいかもしれない。
だが、国公立を受けるのなら準備は早めでなくてはならないのと同じように、美術も早めに決めた方が、それ相応の対応ができるようになる。

 

娘が油絵を専攻することを決めたのは高2の冬のことである。
最初のうちは浮世絵や若冲に影響を強く受けたせいか、日本画に進むことを考えていた。
絵を描いているうち漠然とデザインに興味を持ち始めた。
デザイン系の授業の方がファイン系の授業よりも成績が良かったというのもある。
特に何をやりたいとか明確な希望はなかったのだが、文房具のデザインとか本の装丁とか面白そうだと考えていた。

 

高2の冬、高校の三者面談があった。
その前までに私は娘と進学についてある程度話していた。
娘はデザインに進みたいと言っていた。
通常、教育については家族皆で話をすることにしている。
父である殿さま、母である私で方針を話し合い、本人である娘の意向を確かめてきた。
今回は娘の意向を先に確認していた。
殿さまの仕事の繁忙期とかち合ってしまったからである。

 

三者面談翌日、美術指導の先生と何を話したのか殿さまに伝えたところ、娘の進路希望に待ったがかかった。

反論1:これからの美術デザインの出身者がグローバル社会で生き残っていくことはとても大変だということ。
反論2:娘の性格を考えると、美術デザインには向いていないと思えること。

※共通認識として『大学で勉強したことを社会に生かす』という考えなので、美大に進む限り一般職として就職するという選択肢はない。

 

殿さまは大学教授である。
グローバル社会で生き抜くことを学生に教えようとしている社会学者である。
娘の教育については、必ず家族で十分に話すことにしている。
なぜなら、殿さまは社会と深く接点があり、私は娘のことをより多く知っていて、娘は本人であるので、皆で話した方が良い結論が導けると考えているからである。

反論1から話が始まった。

美術大学のデザイン科の出身者のほとんどの就職先は、デザインに従事するという出口しかないこと(一般的な事務員等を除いて)。
今後の社会全体の流れの中で、デザイン制作はAI主流になっていくこと。
AIができないデザインを考えるのは、ごく一部の少人数になってしまうこと。
その少人数のデザインを考える人間になるには、競争の激化が想像されること。
その競争に勝ち抜かなければ娘がしたいようなデザインはできないこと。

「だから、娘がその競争に打ち勝つ可能性はとても低いと僕は思うの。」
よって反論1は証明された。

次の反論2はとても短かった。
「デザインをするからには、デザインを求める顧客がいて、その要望に基づきデザインしなければならないけれども、それは娘の性格を考えると向いていないと思う。」
一刀両断である。
娘は頑なで人の意見を聞かない。
忠告にしたがって自分の方向性を変更することも難しい。なかなか痛いところをついてきたと思えた。

それより。
と殿様は続けた。
娘は『絵を描く』ことが得意だと思う。
これからの社会を考えると、独自なものを打ち出せる方が強い。
本当は日本画の方がグローバリゼーションの社会では勝ち残っていけると思うけれども、油絵でも悪くはない。
(娘は日本画は向いていないだろうという共通認識が既にできていた。細かくきっちりと描いていくことが要求され日本画は、大雑把な性質の娘には無理だと思われた。)
新しい油絵を描くことができれば生き残っていける。
また、油絵を描いていた人がデザイン関係に就職することはできるけれども、デザインに進んだ人が油絵に転向することはとても難しい。

その時点の娘は、油絵を3枚くらいしか描いたことがなかった。
自分が描きたいように描けない油絵に進むように諭されて、最初のうちは困った様子であったが、油絵に進んでも就職口は意外に多くあるようだと確認し、油絵に進むことにした。

油絵に進むことを決めて1年半。
今では娘はデッサンよりも油絵で描くことの方が楽しいようだ。
デザイン系は絵を描くにも制約が多く、自由に描きたい娘には油絵の方が向いていたようだ。
今の段階では油絵を選んだことは娘にはよかったと思える。

娘が選んだ油絵は『ファイン系』だ。
やってみたいと考えていた本の装丁などは『デザイン系』である。
受験では『デザイン系』と『ファイン系』では求められる絵が全く違う。
受験では白黒のデッサンとカラフルな彩色の絵を1枚ずつ描かされることが多いのだが、描き方も使う。使う絵の具も変わってくるので、早くに専攻を決めたほうがずっと有利なのだ。

『ファイン系』の究極の形は『絵描き』だ。

今後娘がどう進んでいくかはわからないが、描けるだけ描いてみればいい。
その道がどこへ続くかはわからないが、ダリへと通じているかもしれない。

 

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