正解のない美術、受験の点数はどうやって決めていくの?
正解のない美術、まずは絵を描きまくります。
美大受験生達は今の季節、他の普通の大学受験生と同様に美術の勉強をしています。
多くの場合は美術予備校に通って直前講習をうけています。
うちの娘も同様に、一日の大半を予備校で過ごします。
土日も祝日も関係なく、朝から晩まで、休みなく描き続けています。
っていうか、それ指導する先生が大変!!
受験終了までとはいえ、最終の芸大2次の前日まで(3月初旬)学生たちは毎日画塾(美術予備校)に通って、毎日一枚の絵を仕上げるのです。(受験で大学に行っている日以外は!!)
受験の練習描きまくった絵。それって講評はどうなる?
仕上げた絵は、もちろん『講評』されるのを待っています。
そのために受験生達は絵を描いているのです。
娘の通う美術予備校の先生は、「生徒みなが志望校の美大に必ず受かるように」を目標に指導してくださっています。(第一志望の美大でないところはポイント)
予備校のクラスメイトの志望校は、東京藝術大学、武蔵野美術大学、多摩美術大学、東京造形大学です。
娘のクラスは油絵専攻なので、もちろん基本は油絵です。
東京で美大というと、女子美術大学もあるのですが、今回女子美を受ける子はいないようです。
みなが志望校の美大に必ずうかるように。がモットーの直前講習なので、皆の絵をちゃんと『講評』してくださいます。
ここが受験対策。美術予備校に通う意義です。
美大受験では美大ごとに受験対策が必要
一口に美大、といっても美大ごとに受かる絵は微妙に違います。
英語や社会等他の科目と違って正しい『正解』のない美術なので、『こう描けば必ず受かる!』というのはないのですが、同じ専攻でも、対策が変わります。
なので、大学毎に実技課題の対策が必要になってきます。
娘は美術予備校の現役生のみの油絵コースに通っています。
昨日は武蔵野美術大学の油絵対策の油絵を描いてきましたが、今日は多摩美術大学対策のデッサンを描きにいきました。
普通の一般の大学の傾向と対策と同じように、出題形式が各大学によって変わってくるので、美術予備校の指導してくださる先生方に教わることは大いに意義があります。
各大学のオープンキャンパスや学園祭などに出かけていくと、その年度に入学した受験生の作品が展示されているので、たくさん見ればどんな絵が受かっているのか、どんな絵を描かされるのかはなんとなくわかります。
たとえば武蔵野美術大学の油絵専攻の油絵の課題は毎年静物ですし、多摩美術大学の油絵専攻の1次のデッサンは毎年人物を描きます。
むさびに行きたいのなら静物画を練習する必要がありますし、タマビに行きたいのなら、人物を描けるようにしておかねばなりません。
でも、受験対策の絵だけを描いていれば受かるか。と言われてもそのままでは受からないのです。
『正解のない』美術の点数の付け方
『正解のない』美術作品である油絵が、どのように点数を付けられるかというと、
講評と酷評のはざまでお話したように、まず何枚もの絵を一列に並べます。
そこから審査する先生方が、目につくものを選り分けていくのです。
例として武蔵野美術大学をあげると、毎年およそ400人の受験者がきますので、およそ400枚の絵を順繰りに並べていきます。
もちろん400枚全部を一度に見られるようには並べられないので、何十枚かずつだと思います。
並べていった絵の中で、先生方の『お眼鏡にかなった』ものを取り分けていくのです。
取り分けられた絵の中で、順位を決めていきます。
そして、その後に点数をつけていくそうです。
武蔵野美術大学の油絵専攻の実技試験はデッサンと油絵なので、およそ400枚x2=およそ800枚の絵に対してそれをするのです。
毎年たくさんの絵をみていらっしゃる先生方の、かなり『眼がこえて』らっしゃる先生方の目に留まらなければいけません。
目に留まらなければ良い点数をつけてもらえないのです。
ここが他の教科と一番違うところだと思います。
たくさんの絵が並んでいる中からでも目に留まる絵を描けなければ、どんなに上手に絵を描いていたとしても、良い点数をつけてもらえないのです。
受験用の絵は、
①遠くから見た時に目に留まること
②近くで見てもいいと思えること。
この二つをクリアしなければ良い点数をつけてもらえません。
武蔵野美術大学油絵専攻の倍率は毎年4倍前後なので、その倍率をかいくぐらなければなりません。
美大ごとの傾向と対策ってどういうもの?
審査する先生方が違うので、目に留まる絵も大学によりけりで変わる傾向があります。
例えばムサビなら具象的に描いている方が受かりやすいようですし、タマビなら抽象的な方がよいようです。
娘の恩師であるP先生は、東京藝術大学油絵科に現役で合格なさいましたが、一番行きたかった武蔵野美術大学油絵専攻は不合格だったそうです。
抽象的な絵を描いていらっしゃったので、具象的な絵を好むムサビには受け入れてもらえなかったのかもしれません。
もちろん、とっても、とっても上手な絵なら、どんな人の目にも留まるのではないかと思いますが、必ずしもそういう絵がだれでも、いつでも描けるわけではありません。
(っていうか、学生にそんな絵描けるわけないでしょう。)
なので、各大学に合わせた受験対策が有効になります。
ウン十年も油絵を描いている大先生の絵ではなくて、たかだか数年のキャリアしかない学生達の絵なので、そんなに差がない。とも言えます。
『たくさんの絵の中から、審査してくださる先生方の目に留まるような絵を描く』ように指導してくださるのが美術予備校の先生方です。
生徒がどこの美術大学に向いているのか、どんな風に描こうとしているのか、どうしたら希望の大学に入れるのか。等いろいろなことを考えながら指導していただいているようです。
『正解のない美術』を指導してくださる先生方の力量が問われる部分でもあります。